乗馬用ブーツの修理 その1

/ 店長 靴修理事業部

乗馬用ブーツの修理

趣味で乗馬をやっていらっしゃるお客様から、乗馬用ブーツの修理を依頼していただきました

まずはこちら…

―Before

お客様の知り合いのプロの方が、オーダーで製作し使用していたものを譲ってもらったそうです。

やはりプロの方ともなると、ハードな環境で履かれていたようで、至る所でかなりのダメージを負っていました。
ソールに関連する部材は全て激しく劣化し、多くの部分で縫いのほつれが見受けられました。
このような乗馬用の靴の修理は初めてだったのと、修理箇所の多さからかなり金額が高くなることが予想されましたが、「思い入れの強い靴なので、いくらかけてでも修理したい」と言っていただきましたので、では精一杯やってみます…!と引き受けました。

まずは、全体を手洗いでクリーニング。
土の汚れを落として、オゾンでしっかり除菌・脱臭しました。
そして革のソールを剥がしてみると、このような感じになっていました。

ソールの出し縫いがほとんど切れ、接着も弱まっているところに、泥や水が入り込んでしまっていたためか、ウェルトも中底もぼろぼろに劣化してしまっていました。
ウェルトの劣化のみであれば、ウェルトを交換しすくい縫いをし直すだけで済むのですが、今回の場合は中底も再利用できないほどに劣化していたため、中底から作り直すことになりました。

中底の交換は、ただ元の形に合わせて中底の革を切ってくっつければいいというものではなく…、この作業は靴を製作する時に使う木型が無いとうまく出来ません。
木型の形状に合わせてクセ付けをしたり、中底を固定したりなど、木型が必要となります。
本来はそれぞれの靴専用の木型を使用できれば一番良いのですが、当店の注文靴でもない限りそうもいかないので、今回は、当店にある木型の中から極力近い形の木型を探し出し、少し修正を加えて使用しました。
(中底の交換には時間も金額もかなりかかってしまうため、よほどのことがない限りはおすすめしていません。)

アッパーに残っている元の縫い穴を狙って、ひと目ずつ縫っていきます。
 

リウェルトが完了したら、あとはシャンクを取り付け、コルクで隙間を埋めて、新しいソールを貼って…と、通常のオールソールの作業です。

―After

蘇りました!
ヒールのトップリフトは、機能性を考慮してビブラムのゴム素材のものにしました。

写真では地味で伝わりにくいのですが、アッパーの革がものすごく硬く、ほつれの縫い直し作業に思いのほか時間がかかってしまいました。
お客様曰く、このブーツは乗馬用の中でも断トツに硬いつくりのようでした。
私たちが今まで修理したものの中でも、断トツに硬かったです。

かかとのほつれの縫い直しは、しっかり貼り合わせてもとの縫い穴で縫い直しても、革の厚さや硬さのせいか、どうしてもふたつのパーツをうまく縫い合わせることができませんでした。
そのため、補強も兼ねて内側からすべり革を新たに貼り、縫い合わせました。


羽根の部分も、ファスナーもあってかなり負荷がかかるためか、閂を中心に結構ほつれていました。
この部分の補修は、一般的な靴であれば当店の修理用のミシンで縫えるのですが、今回の場合は革の硬さと丈の長さが原因で手縫いでしか縫えず、通常より手間がかかってしまいました。


このあたりも所々ほつれていたので、しっかり縫い直しました。

通常よりお時間を頂いてしまいましたが、無事履けるところまで直せました。
大事な靴をお預けいただき、ありがとうございました!
なかなかこのような特殊な靴を扱うことは無いので、たいへん勉強にもなりました。


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